リリイ・シュシュのすべて


2001年
監督 岩井俊二
脚本 岩井俊二
出演 市原隼人忍成修吾蒼井優伊藤歩大沢たかお稲森いずみ
音楽 小林武史

雄一(市原隼人)は、中学1年の夏休み後、仲の良かった同級生(忍成修吾)から突然イジメの標的にされる。彼は、心の痛みをカリスマ的な存在である歌姫『リリイ・シュシュ』の世界で癒そうとする。そこだけが、自分の居場所であるかのように。
イジメ、万引き、援助交際、殺人、自殺…閉塞感に押しつぶされそうな日常と、そこから逃避してリリイ・シュシュのファンサイトに没頭する非日常の間で生きる十四歳。

部屋を片付けていたら、「リリイ・シュシュのすべて」の小説を発見→読む→映画観る
のいつものパターンで観てしまいました。
大好きな映画なので。これも録画したビデオがあるので。
ふと思い出すと観てしまうのです。

あと5ヶ月で終わってしまう学生生活だけれども、中学時代の思い出が一気に蘇る映画です。
1999年、13歳、中学1年。
2000年、14歳、中学2年。
2001年、15歳、中学3年。
この映画の公開された2001年。私も15歳でした。
そしてこのリアルな非日常の映画を、私は15歳のときに初めて観ました。
あまりのリアルと残酷さに苦しくなるけど、光が見える映画です。
これもまた、このブログを初めて間もない頃に感想を書いているのですがね。
中学時代って学校と家の往復で、友達も学校の友達しかいないし、
学校での出来事も学校の友達にしか話さない。
悩みも楽しみもその狭い世界で起こっていること。
この話はインターネットの掲示板で起こる非日常と主人公が生きる日常の行き来。
14歳のとき私も初めて何度もBBSで書き込む常連になっていたサイトがあって、
そこで出会った人とはメールしたり、手紙を送ったりしてました。
結局誰とも会わなかったけど。
学校の友達にはこんなこと絶対言ってなかったので私は自分しか知らない学校以外の友達がいることがうれしかったりして。
でも現実では、、、、
どうやって大嫌いな部活の顧問を殺そうか考えていたのは有名な話ですが。


この映画は音楽がとても重要な役割があって、
雄一の癒しである「リリイ・シュシュ」=非現実を表現しています。
ネットの世界では管理人をしていて、青猫という話し相手と意気投合するんだけど、
その青猫の正体は雄一をイジメている星野だったんです。
この事実をリリイのライブ前に知ることになった雄一。
ラスト近く。「リリイがいるぞー!!」って叫ぶ雄一を観ると(´;ω;`)ブワッ
雄一にリリイを教えてくれた星野。星野にリリイを教えた久野。津田にリリイを教えた雄一。
4人は同じ学校にいるのに同じリリイを好きなのに離れていきます。
現実の閉塞した日常で流れるクロード・ドビュシー。
リリイはドビュッシーと同じエーテルを感じていて、
ドビュッシーもまたきれいな音楽でそして現実とのコントラストがついて残酷であります。
雄一の最後のバラ色の思い出になった沖縄旅行で、星野が興味を持った沖縄民謡。
その民謡の名前が南の美しい島を表す「アラグスク」。
そしてリリイの「アラベスク」には南の島が登場する。
それはドビュッシーの「アラベスク」のオマージュでもある。
沖縄旅行を境に星野は荒れていくんだけど、星野が登場するときにアラグスクが流れる。

岩井俊二の映画は過去と現在が行ったり来たりする。
最初は混乱するけど、その意図と効果がはっきりしているのでだんだんわかってきます。

中学時代の部活の辛さや、友人関係、家族関係、好きな人、憧れの人、嫌いな人。
いろんなことが蘇る。

若き日の市原隼人蒼井優の演技も良いです。
中学生だった同世代の役者がたくさん出ているのも観ていて楽しいです。